最近、「非認知能力」という言葉を耳にする機会が増えていませんか?
これまで子どもの将来を考えるうえで、「学力」や「IQ」など、数字で測れる力が重視されてきました。
けれど今は、そうした目に見える力だけではなく、「見えにくい力」にも注目が集まっています。
たとえば、
- 困難にぶつかっても最後までやり遂げる力
- まわりと協力しながら行動できる力
- 気持ちが乱れても落ち着いて対応できる力
こうした力は、テストの点数には表れませんが、実は子どもの人生を支える土台になるもの。
それが、「非認知能力」と呼ばれる力です。
◆非認知能力とは?
非認知能力(non-cognitive skills)とは、テストやIQのように数値で測ることが難しい、心の力や性格的な傾向のことを指します。
たとえば:
- 感情や行動をコントロールする力(怒りや不安を落ち着かせて行動する力)
- 粘り強さや持続力(失敗してもあきらめずにやり抜く力)
- 意欲や好奇心(挑戦しようとする前向きな気持ち)
- 他者への配慮や共感力(相手の立場に立って考えたり、助け合う力)
- 柔軟な思考力や創造性(工夫しながら乗り越える力)
- 自己肯定感や自信(自分の存在や力を前向きにとらえる感覚)
こうした力は、いわば“生きていく力”とも言えるもの。
学力とは異なり、日々の生活や人間関係、さらには将来の働き方や幸福感にも深く関わっています。
◆研究でも注目される「見えない力」
非認知能力の重要性は、教育や発達に関するさまざまな研究でも裏づけられています。
- アメリカで行われた研究では、幼児期に丁寧な保育を受けた子どもたちは、大人になってからより高い収入を得たり、安定した生活を送る傾向がありました。現在では、この保育を通じて育まれた意欲や自制心といった非認知能力が、将来の行動や生活の安定に影響したと考えられています。(ペリー就学前プログラム/Perry Preschool Project)
- ダンカンによる大規模調査では、小学校入学前の算数力が、のちの学力に最も強く関係していたことが示されています。。一方で、集中力や自己制御力といった非認知能力も学業の持続や社会的な適応に深く関わっており、学力とは異なる軸で子どもの成長を支える重要な力であることが示唆されています。(ダンカンら、2007年/School Readiness and Later Achievement)
- ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン教授は、非認知能力こそが将来の社会的成功や経済的安定に強く影響するとし、幼児期の教育への早期投資の重要性を説いています。(Heckman, 2006)
こうした知見から、目には見えにくい「心の力」が、将来の大きな差を生むことがわかっています。
◆非認知能力はどう育てる?
では、こうした力を育てるにはどうすればいいのでしょうか?
実は、特別な教材や習い事よりも、日々の関わりの中で育まれることが多いとされています。
たとえば:
- 子どもが失敗しても責めず、「どう感じたか」を一緒に振り返る
- 結果よりも「がんばった過程」や「工夫したこと」に目を向けてほめる
- 長く集中できる遊びの時間を大切にする(積み木、ごっこ遊び、自然遊びなど)
- すぐに手を出さず、子どもが自分で試行錯誤する時間を見守る
- 子どもの気持ちに共感し、言葉で返す(「がんばってたもんね」「悔しかったよね」など)
こうしたやりとりの積み重ねが、少しずつ子どもの「こころの力」を育てていく土壌になります。
◆まとめ:目に見えない力が、未来をつくる
非認知能力は、テストや成績表には表れにくい力ですが、子どもが社会の中で自分らしく生きていくための大きな支えとなります。
困難な場面で踏ん張れる力、人とのつながりを大切にできる力、そして「やってみよう」と思える前向きな心。
どれも、数字にはなりにくいけれど、子どもにとって一生ものの財産になる力です。
学力と同じくらい――あるいは、それ以上に――
子どもの“こころの力”にも目を向けてみませんか?
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